ここ最近で、「言語発達に問題がある」という理由で来院されるケースが立て続けにありました。一人は、まったく言葉が出てこないという4歳の男の子。それから、言葉は出るが、支離滅裂で親でさえ何を言っているのかわからない時があるという５歳の女の子。３人目は、舌や顎の動きが悪いためか、発音に問題があり、聞き取りにくく、大人が何度も聞き返すことで億劫になり話しづらくなっている５歳の男の子です。

様々な原因が考えられますが、言語発達において大切なことは、まず親子が一緒に過ごしコミュニケーションする時間を長くとることです。それから、声帯や舌、口唇、顎などの発声に関わる器官の運動だけではなく、手足の身体運動も大きく関わると言われています。言語をつかさどる脳は、遊びや運動で活性化することも分かっています。

近年、テレビやスマホを見ることが多くなり、それを言語発達のツールとして使用しているという親御さんも少なくありません。しかし、それは全くの逆効果だということが分かってきています。

トロント大学と医療機関（Hospital for Sick Children）は、生後６か月から２歳の子ども８９４人を対象に、スマートフォンの使用時間と言語能力をの発達状況に関するデータを分析した結果、スマートフォンを使用しているグループの子どもたちの４９％に発話能力の遅れがみられたと書かれています。

東北大学加齢医学研究所では、長時間のテレビ視聴は、脳の前頭極領域、運動感覚領域、視床下部周辺領域の発達性変化に負の影響をもたらし、言語能力が低下すると発表しています。

テレビやスマートフォンは娯楽の一部であり、言語発達を向上させるものではないようです。

反対に、親子で長時間一緒に過ごし、会話をすると脳の言語機能の発達が促されることも明らかになりました。その中でも絵本の読み聞かせは、子どもの興味・情緒的発達・想像力、言語能力を刺激すると言われています。

読み聞かせは言語発達だけではなく、情緒にも良い影響を与えます。２００８年には読み聞かせの効果が科学的に実証されました。この実験の結果、読み聞かせ中に読み手である母親の脳では前頭前野が活発に働き、聞き手である子どもの脳では、大脳辺縁系が活発に働いていることが分かりました。大脳辺縁系は喜怒哀楽を生み出し、その感情に基づいて基本的な行動を決めている部分です。子供は読み聞かせを通じて、結果として、豊かな感情を養うことができるということです。

言語発達を促すには、身体を動かす基本的な遊びや運動、そして親子のコミュニケーション、特に絵本の読み聞かせが重要な役割を担っているように感じます。

上記の子どもたちは、言語・運動療育に加え、カイロプラクティックケアで改善されています。しかし、一番大切なのは、親子のコミュニケーションの時間なのかもしれません。

執筆：
山地 梨映子 DC,CACCP
リコ・カイロプラクティックオフィス / 大阪府
http://rico-chiro.com/

参照：

https://www.p.u-tokyo.ac.jp/lab/ichikawa/johoka/2008/Group3/yomikikase_eikyou5.html

https://note.com/word_pecker/n/n463a67fa1dfa

https://iphone-mania.jp/news-166828/

https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2015/004095.php