カイロプラクティック院と歯医者さんは似ています。
カイロプラクティック発祥の地アメリカでは、町のどこにでもカイロプラクティック院と歯医者さんがあります。
歯は自分で磨けますが、いくら上手に磨いても、少しずつ歯石が溜まります。同様に、背骨は姿勢や食事、睡眠や運動に気をつけることで、良い状態を保つことはできますが、常に理想的な生活を送るのは難しいので、少しずつ動きにくい部分ができてしまいます。
幸い、歯にも背骨にも、専門家がいますので、定期的に歯医者さんで歯石をとって虫歯がないかチェックしてもらったり、カイロプラクティック院でアジャストメントを受けて背骨の動きを最適な状態に整えてもらうことで、より長く、健康的な状態を保つことができます。
歯と背骨は構造的にも密接に関係しています。噛み合わせや顎関節の問題は、頭蓋骨や頸椎を介して、背骨に影響を与えます。逆方向からも同じことが言えます。背骨の問題は、噛み合わせや顎関節の動きに影響を与えます。
先日、日本小児カイロ協会メンバーの溝渕先生が主導する、高知ヘルスリテラシー向上協会主催の勉強会に参加し、うるぐす歯科医院の沼田先生から「子供の歯並び改善への取り組み」についてお話を聴きました。
これまでの歯科医療は、歯並びが悪ければ「矯正」するという考え方しかありませんでしたが、なぜ歯並びが悪くなるのかについて研究が進んだ結果、歯並びが悪い子は食べたり飲み込んだりがうまくできず、口の機能が弱いことがわかってきました。そして昨今は「口腔機能発達不全症」として、取り組む歯医者さんが増えてきたそうです。(MyobraceⓇ治療:うるぐす歯科医院では、姿勢や鼻呼吸、舌の位置や飲み方食べ方のトレーニングを月1回、2年間かけて指導。小学校1〜4年生対象。)
歯は、舌と唇に挟まれていて、舌の力と唇の力のバランスがとれていると綺麗な歯並びになります。歯並びが悪い子は舌の機能が弱く、上手に食べたり飲んだりができないので、唇やほっぺたの力を使います。結果として、歯を内側から押す力と外側から押す力のバランスが崩れ、歯列が乱れてしまうのです。
では、そもそもなぜ子供達の舌の機能が弱くなってしまっているのか。
沼田先生いわく、今の子は赤ちゃんの頃から大切に育てられすぎていて「欲」が足りない、とのこと。
詰まらせたら怖い、と食べものを小さく切ってしまったり、柔らかいものばかり与えていたり、テレビを見せながら食事させていたり。
親が手をかけているので、虫歯は昔より少ないけれど、食べものを目で見て、匂いを嗅いで、手でつかんでかぶりつく、という本能的な行動経験が少なすぎる、とのことです。
ちょうど新年に放映されたNHK Eテレ「すくすく子育て」のお悩み相談でも、「離乳食をあげようとするとスプーンで遊んで、ちゃんと食べてくれない」という親御さんに、「お子さんは自分でつかんで食べたいのでは?」とのアドバイスがありました。
実際、そのお子さんが遊んでしまう映像を見ると、お母さんから奪い取ったスプーンで遊んでから、スプーンの先についているご飯を口に入れているのです。子供達の「自分でやりたい!」という欲は小さい頃からとても強いのですね。
お子さんがスプーンを持ちたがったり、手づかみ食べをするようになったら(生後6ヶ月以降が目安、個人差あり)、バナナくらいの軟らかさまでゆでたにんじんや大根、キャベツの芯などの野菜スティックを、手から少しはみ出る長さ(4-5cmくらい)にしたものを与えると良い、とお勧めしていました。
最近はBLW (Baby-Led Weaning) というイギリス発祥の「離乳食を作らない」方法も広まってきているようです。赤ちゃんのために食べものをすりつぶしたりせず、歯茎で噛みつぶせる軟らかさの食材を赤ちゃんの目の前のテーブルに置き、赤ちゃん自らが手づかみで口に運びます。お母さんがスプーンで口に運んであげたりはしません。赤ちゃんの「欲」にまかせた方法です。赤ちゃんは顔じゅう食べものでベタベタになったりしますが、いたって満足そう‥。
欧米では盛んなようで、当院に産後ケアで通われていたフランス人女性が、日本の小児科医はBLWのことを知らなくて困る、と話されていました。
では、小児カイロは歯並びのために何ができるのだろう、と考えてみると「舌の力」といえば、おっぱいを飲む力。
上手におっぱいを飲んでくれない、というお子さんはたくさん来院されます。おっぱいの出が悪い、とお母様が来院されることもありますが、実際は赤ちゃんの口腔機能の問題であることが多く、カイロプラクティックで頸椎や顎関節、頭蓋などにアプローチすると、赤ちゃんの口の開きが大きくなったり、吸いが深く強くなったり、飲み込みが上手になって空気を飲み込むことが減り、ゲップもうまくできるようになったり、と良い変化が色々と観察されます。
これまで、歯列矯正を受ける、というお子さんには、可能であれば矯正前に、あるいは並行してでもカイロケアを受けたほうが良いことをお伝えしてきましたが、赤ちゃんがおっぱいを上手に飲めるようにカイロケアを行っている時点で、既により良い歯並びのためのアプローチをしていたのだと認識しました。
歯と背骨、歯科医療とカイロプラクティック、こんなにも相互に影響し合っていることを、提供する側も受ける側も、もっともっと知る必要がありますね。
追伸:
離乳食(補完食)について、BLWはハードルが高い!という方にはこちらの本が私のオフィスで人気です。気が楽になりました〜、とご意見いただいています。
「赤ちゃんのための補完食入門」
彩図社 相川 晴 著, 川口 由美子 監修
参照:
MyobraceⓇ Memberとは
http://orthika.jp/publics/index/40/
NHK すくすく子育て情報「離乳食と子どもの貧血」
https://www.nhk.or.jp/sukusuku/p2021/872.html
こんなに楽でいいの?“離乳食を作らない離乳食”、BLW(ベビーレッドウィーニング)
https://enfant.living.jp/mama/mamnews/hayashimika/432447/
一般社団法人 日本BLW協会 赤ちゃんの「食べたい!」を育む食卓
https://babyledweaning.or.jp/
執筆:
山﨑 美佳 DC, CACCP, PhD
きっず&ふぁみりーカイロプラクティック三田/ 東京都港区
https://kiffami.com/