投稿記事一覧

No.012 腹ばい時間「Tummy Time」のススメ

Tummy Time をご存じですか?
アメリカでは、赤ちゃんの発達に「Tummy Time」が大切! という言葉をよく耳にします。
 
Tummyはお腹、つまり腹ばい(うつ伏せ)の時間。
「腹ばい」と「うつ伏せ」は厳密には意味の違いがあるようですが、ここではお腹を下にして過ごす時間のことだと思ってください。
 
まだ寝返りができない赤ちゃんは、腹ばいの時間を過ごすことで、頭を持ち上げる首の力、腕の力、そして体幹を安定させるための腹筋や背筋の力をつけていきます。

身体を自由に動かすには、筋力だけなく、それらの筋力を「タイミング良く組み合わせて」使う、脳神経の働きが不可欠です。試行錯誤を重ねながら、重力に逆らって首、四肢、体幹をコントロールする力、つまり運動能力の基礎を身につけていきます。
 
Tummy Timeが注目されるようになったのは、仰向け寝キャンペーンと深く関係しています。
 
米国でうつ伏せ寝と乳幼児突然死症候群(SIDS)の関連性が初めて示唆された1992年当時、米国の70%の乳児がうつ伏せ寝だったそうです。(参照1)

SIDSのリスクを減らすために仰向け寝キャンペーンを行った結果、2001年には乳児の87%が仰向け寝または横寝、という劇的な変化が起こりました。

米国のSIDSによる死亡率は1992年に出生1000人あたり1.2人でしたが、2001年には0.56人と一定の効果を認めました。日本でも平成10年(1998年)から仰向け寝キャンペーンを行い、SIDSによる死亡件数は1997年の538件から2013年の125件と4分の1以下に減少、現在も仰向け寝が推奨されています。(参照2,3)
 
うつ伏せ寝が危険、という知識があると、親は赤ちゃんが起きている時もあまりうつ伏せにはしなくなります。実際、100人の乳児を対象にしたオーストラリアの研究で、親にSIDSの知識があるほど、遊ばせるときもうつ伏せを避ける傾向があると報告されています。(参照1)
 
仰向け寝が主流になる一方で、うつ伏せ寝の子のほうが運動機能発達が早い、という研究報告が出るようになりました。さらに2007年には、米国の生後4ヶ月児100人を対象にした研究で、起床時に腹ばいで過ごす時間が長い赤ちゃんほど、様々な運動発達の指標の達成率が高いことが報告されました。(参照1)

例えば、腹ばいで腕をついて胸を持ち上げ頭を45°以上持ち上げる、という姿勢は、4ヶ月児100人のうち69人ができて、その69人の起床時の平均腹ばい時間は1時間30分、その姿勢をとれない31人の平均腹ばい時間は22分でした。
 
また、仰向けになったときに手で膝をタッチできるか、という指標では、できている子66人の平均腹ばい時間は1時間21分、できない子34人の腹ばい時間は平均47分
 
手をついたお座りができるか、という指標では、できている子60人の腹ばい時間は平均1時間33分、出来ない子40人の腹ばい時間は平均34分でした。

この研究から、起床時に腹ばい時間を長くとっている子は、うつ伏せだけでなく仰向けやお座りの姿勢でも発達指標に早く到達する傾向が観察されました。
 
米国小児科学会はSIDSリスク低減のために仰向け寝を推奨する一方、1996年以降は、発達の観点および頭の変形を予防するためにも、安全を観察しながら起床時にTummy Timeを取り入れることを勧めています。(参照4,5)
 
赤ちゃんにはもともと発達する能力が備わっているから「訓練」する必要はない、という意見はもっともです。ただ、赤ちゃんを腹ばいにすることが「自然」だった昔から、「安全」のために意識的に仰向けにさせるようになってしまった現在、自然に得られた刺激が少なくなっているのではないでしょうか? 
 
2016年にカイロプラクティックドクターらが発表した論文には、Tummy Timeの目安が記載されています。(参照4)
 
生後1週 5分/日
生後4週 10分/日
生後8週 20分/日
生後12週 45分/日
生後16週 80分/日
※上記は1日の合計時間。何回かに分けても良い。
 
もちろん赤ちゃんを腹ばいにするのは、赤ちゃんの起床時、機嫌の良いとき、大人が観察しながら行い、周りには窒息の危険性があるものを置かないようにしましょう。
 
赤ちゃんはひとりひとり成長発達スピードが異なります。何ヶ月だから何分、という目安はほどほどに、嫌がったらやめる、楽しんでいたら付き合う、「訓練」ではなく、あくまで「遊び」や「コミュニケーション」の一環として、取り入れてみてください。
 
うつ伏せにするのが不安なときは、まずはお母さんお父さんが仰向けになって、胸の上で赤ちゃんを腹ばいにさせてみるのがお勧めです。どんな気分で腹ばいになっているのか、表情をよ〜く観察してみてくださいね。

 
【参照】

1) Dudek-Shriber L, Zelazny S. The effects of prone positioning on the quality and acquisition of developmental milestones in four-month-old infants. Pediatric Physical Therapy 2007; 19(1):48-55.
https://journals.lww.com/pedpt/Fulltext/2007/01910/The_Effects_of_Prone_Positioning_on_the_Quality.7.aspx

2) きっふぁみHP記事_うつぶせ寝の危険とは・・
https://kiffami.com/archives/910

3)厚生労働省 乳幼児突然死症候群(SIDS)について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/sids.html

4) Miller J, Vallone S. What is tummy time: is it necessary for newborns? Journal of Clinical Chiropractic Pediatrics 2016; 15(3):1306-1308
http://jccponline.com/tummytime.pdf

5) American Academy of Pediatrics. Positioning and sudden infant death syndrome (SIDS): Update. Task Force on Infant Positioning and SIDS. Pediatrics 1996; 98(6):1216-1218.
https://pediatrics.aappublications.org/content/98/6/1216

 
執筆:
山﨑 美佳 DC,PhD
きっず&ふぁみりーカイロプラクティック三田/ 東京都港区
https://kiffami.com

関連記事

投稿

  1. Tummy Time をご存じですか?アメリカでは、赤ちゃんの発達に「Tummy Time」が大切...
  2. 「お子様の脳は活発に働いていますか?」今回はこのテーマでいきたいと思います。
  3. 日本においては随分状況が落ち着いてきたようですが、一部の国では感染者数、死者数の増加が継続している...
  4. 私たちの「1つの体」は、(諸説ありますが)「30兆個以上の細胞君たちから構成」され ています。
  5. 「落ち着きがない」「イライラしている」「暴れ出す」「お友達に手をあげる」など、この様なお子様の悩み...
  6. 心臓のドクッ、ドクッ、というリズム、このリズムは実はメトロノームのように一定ではなく、ある程度の「...
  7. この記事を読んでくださり有難うございます。 今月はこのテーマで書いていきたいと思います。
  8. ロコモティブシンドロームという言葉をご存知でしょうか。
  9. 今日は、将来を担う子供達がより良く発達できる方法についてお伝えします。
  10. 近年、「発達障害」の子供に悩む親御さんが増えているように思います。

ニュースレター

  1. 2020年8月NL_成長発達の遅れ

  2. 2020年7月NL_不妊・未妊とは

  3. 2020年6月NL_逆子

  4. 2020年5月NL_妊娠中の腰痛・恥骨痛

  5. 2020年4月NL_スポーツ時のケガ

  6. 2020年3月NL_便秘

  7. 2020年2月NL_夜泣き

  8. 2020年1月NL_歯ぎしり

  9. 2019年12月NL_ハイハイを始めたら見てほしいポイント

  10. 2019年11月NL_姿勢の問題

Facebook