日本小児カイロプラクティック協会は子ども達の背骨の健康、そしてそのケアの大切さを知っていただくために情報発信をこれまで行ってきました。
一般的には小学生がカイロプラクティックのケアを受けるのも、「そんなに早く受ける必要があるんですか?」と疑問に持たれる方が多いのですが、未就学児や乳児を診ることも決して珍しくありません。それどころか、生まれて間もない新生児でも対象となります。
今回紹介するリサーチは、カイロプラクティックと同様、背骨の問題が全身に及ぼす影響に注目し、そのケアを行っているアメリカのオステオパシーのドクター達が健康な新生児(生まれて6時間~72時間)に対して行った背骨、骨盤、頭蓋の状態に関する調査です。
結論からお伝えすると、100人の新生児を対象に行われた調査の結果、健康な新生児であっても頭蓋、頸椎、腰椎、そして仙骨部において関節の機能不全(関節としての働きの低下)は見られるのが当たり前であったとのことです。
何が原因で脊柱関節機能不全が起きたのか。母子両方から多くの情報(初産か多産婦か、自然分娩か帝王切開か、自然分娩でも医療介入があったのか、麻酔の種類、分娩時間、胎位、出産時の体重、アプガースコア、頭囲、顔貌の左右対称性、等々)を収集し、関節機能不全との関係の検証が為されました。その結果として、関節機能不全との関連が見られたのは分娩時間のみという結果でした。分娩時間が長いほど、機能不全の度合いが上がるとのことです。長時間の分娩はお母さんにとっての負担も大きいですが、赤ちゃんにとっても負担となるのは想像に難くない話です。ただ、その関与の度合いも極端に大きい訳ではなく、分娩時間が長引くことで若干悪化する程度で、基本的にはほとんどの新生児に何かしら機能不全が見られるとの結果です。
検査数の制限があることから、今回のこのリサーチ結果のみで、新生児が一人残らずカイロプラクティックのアジャストメントを受けるべきと結論付けるものではありません。リサーチでもこの関節機能不全が自然に解消しうるものか不明である点も述べられていますし、自然に解消するのであればアジャストメントのような外部からの介入が必ずしも必要でないかもしれません。しかし、これまでのカイロプラクターとして、「夜泣きがひどい」「おっぱいを吸ってくれない」「向き癖が強い」その他にもお悩みがあった時に、背骨の問題を解消することで親子両方の負担軽減に繋がることを観察してきました。今回のリサーチは、背骨の問題は実は人生におけるほんの初期から多くのお子さんが持ちうるということを示唆する内容となっています。今後、なぜそれほど多くの機能不全が起こるのか、そのうちどのような場合においてカイロプラクターやオステオパシーによるケアが必要になるのかといった研究が為されれば、より効果的に多くのお子さんの健康増進に寄与できることから、今後も追跡していきたいと思います。
(補足)
カイロプラクティックは脊椎の問題が神経機能の低下を通して引き起こす身体のトラブルを扱うことに起源を発するのに対して、オステオパシーは骨格の問題が血流に悪影響を及ぼすことから様々な身体の問題を引き起こすという考えを起源として持つといった違いがある。本場アメリカにおける発展の仕方や、現在の臨床の仕方(多くのD.O.「ドクター・オブ・オステオパシー」は投薬や手術など、日本における西洋医学の領域も行なっている)には違いはあるものの、両者とも一般的には手技療法と認識されており、本来備わっている身体の能力を最大限発揮させることを目的とすることや、およそ同時期の19世紀末のアメリカ中西部で始まった等、類似点も多い。研究を行うにあたって、両者の共通点から、D.O.の行なったものがカイロプラクターとしても大変参考になります。
参照:
Incidence of Somatic Dysfunction in Healthy Newborns
https://www.degruyter.com/document/doi/10.7556/jaoa.2015.136/html