ここ数年、妊娠を希望しているが、なかなか授からないという患者さんが多数オフィスにいらっしゃいます。たいていは女性のみの来院ですが本来はカップルで来ていただくのが理想です。(理由は最後に記述しています)
患者さんはとにかくみんな必死でがんばっています。食事や運動・生活習慣にも気を使い、中には仕事を辞めて向き合っている人もいます。しかし、中々思うように進まずに「ストレス」をため込んで、焦りとイラつきを抱えています。
悩むことはみんな同じです。こんなにがんばっているのに、「なぜできないのか?」「なにが悪いのか?」「他に何をすればいいのか?」です。そして自分を追い込み、「きっと私が悪いんだ」と自己否定をしてしまい、悲観的な考え方に陥るケースがみられます。
これでは、本末転倒です。
「ストレス」は妊娠に必要なホルモンの敵です。
一つに、ストレスはプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)の分泌を増加し、排卵障害を引き起こす可能性があります。そして、脳の視床下部や下垂体に影響し、逆に妊娠に必要なホルモンの分泌を妨げます。それから、交感神経が過敏になり、身体は“妊娠”よりも“今生きる事”に必死に適応することになります。
これでは、妊娠できる身体にはなりません。
では、どうすれば良いのか?
いわゆるレールに乗った不妊治療を受けながらも、身体の機能を向上していく別の方法は、「幸せホルモン」を増加させることです。幸せホルモンは妊娠力を高める効果があります。
幸せホルモンとは、セロトニン・オキシトシンです。
セロトニンは、やる気や幸福感を感じ、精神を安定させる効果のある脳内物質であり、エストロゲン(卵胞ホルモン)と深く関わっています。卵胞を成熟させ、子宮内膜を厚くさせるエストロゲンは、セロトニンの分泌と比例することが分かっていますので、セロトニンの分泌を増やすと、幸福感も味わえ、さらに妊娠力がアップすると考えられます。さらに、セロトニンは精子の運動率もアップすると言われていますので、妊活に大変効果がありますね。
オキシトシンは、LOVEホルモンとも言われ、触れ合ったり、親密度・愛情を高めていくと分泌され、精神安定やリラックスを促し、睡眠の質もあがると報告されています。手を繋いだり、ハグするだけでも分泌が高まります。こちらも精子の運動率を高め、子宮収縮の振幅が大きくなり(精子を吸入する力が高まる)、受精率をアップすると言われています。
セロトニン・オキシトシンを増やす方法は、
1、日光を浴びる
2、入浴(お風呂に浸かる)
3、リズミカルに身体を動かす(歩行・咀嚼・呼吸・音楽を聴くなど)
4、親しい人と楽しい時間を過ごす(触れ合う・団欒する・感情を表す)
5、睡眠をしっかり摂る
などです。
以上のことを考えた結果、大切なことは、カップルが本当に心から愛と幸福感を感じているかどうかということです。一生懸命妊活をしてもストレスをためては意味がありません。子供は2人で作るものであり、1人では作れません。2人で話し合い、何をするべきか、一緒に向き合っていくことがとても大切なことであると考えます。
身体を整えるためにカップルでカイロプラクティックを受けていただくのはもちろんですが、本当の意味で心身ともに整えるために、「幸せホルモン」の分泌を高める活動を2人でされてみてはいかがでしょうか。
【参照】
1)オキシトシンと妊娠の関係
https://www.hug-full.com/hope
2)Kunz,G.,Beil,D.,Huppert,T.& Leyendecker,G. (2007) Oxytocin-A stimulator of directed sperm transport in humans. Reproductive BioMedicine,14,32-39.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1472648310607614
3)Nicholson,H.D., Parkinson,T.J.& Lapwood,K.R (1999) Effects of oxytocin and vasopressin on sperm transport from the cauda epididymis in sheep. J of Reproduction and Fertility,117,199-305.
http://europepmc.org/article/MED/10690197
4)Association between neuropeptide oxytocin and male infertility
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2965347/
5)神秘なる「オキシトシン」に注目せよ!
https://next.rikunabi.com/journal/20151128/
執筆:
山地 梨映子 DC,CACCP
リコ・カイロプラクティックオフィス/ 大阪市北区
http://rico-chiro.com/